
タヒチアンダンス(オリ・タヒチ)
タヒチアンダンス、通称「オリ・タヒチ('ori Tahiti)」は「タヒチ島およびソシエテ諸島(ボラボラ島、モーレア島、ライアテア島、タハア島、フアヒネ島など)で踊られる芸術的・社会的・文化的なダンス」を指し、フレンチポリネシアで最も広く親しまれているダンスです。
タヒチの伝統的なダンスは、今や世界中に広がり、30,000人以上のダンサーが世界各地でタヒチアンダンスを楽しんでいます。ラテンアメリカ、アメリカ合衆国、フランス、日本などどこに住んでいても、大都市の近くであれば「オリ・タヒチ」のレッスンを提供しているダンススクールを簡単に見つけることができるでしょう。

タヒチアンダンス:フレンチポリネシアのアイデンティティ
オリ・タヒチ('Ori Tahiti)は、タヒチおよびフレンチポリネシアの文化を語るうえで重要な要素です。オリ・タヒチは、伝統的なダンス、音楽、打楽器、語り('ōrero)、歌、そして衣装が融合して完成します。このダンスは、タヒチの人々と彼らが生きる土地「テ・フェヌア(te fenua)」とのつながりを象徴しています。
この絆を表現するために、ダンサーの身体は象徴的に2つのパートに分けられます。脚は大地との繋がりを表し、一方で胴体、頭、腕は海、風、空といった自然の要素を表現するために使われます。

Heiva i Tahiti(ヘイヴァ・イ・タヒチ) 最高のポリネシアンダンスショー
フ レンチポリネシアの子どもたちは幼い頃から、タヒチ語(レオ・マオヒ/reo Ma'ohi)を学ぶのと同じように、オリ・タヒチ('ori Tahiti)を学びます。ダンスと言語は、彼らの文化的アイデンティティの柱なのです。
「ヘイヴァ・デ・エコール(Heiva des écoles)」では、子どもたちが舞台でパフォーマンスを披露しますが、ダンサーたちの技術が上達するにつれて、その動きはより正確になり、ダンスの背後にある意味が明らかになっていきます。そして、一つひとつのステップに込められた自然や文化との深い結びつきが感じられるようになります。
「ヘイヴァ・イ・タヒチ(Heiva i Tahiti)」には、プロのダンスグループが数十人、ときには100人を超える規模で出演します。舞台の上で、ダンスに命が吹き込まれる光景ほど美しいものはありません。下半身はリズムを刻み、上半身は優雅な動きによる表現力で見る人々を魅了します。男性と女性の間、そして太鼓と歌声の間で、見事な対話が繰り広げられるのです。

型式化されたダンスと振り付け
タヒチアンダンスには、オテア('ōte'a)、アパリマ('aparima)、ヒヴィナウ(hivināu)、パオア(pā'ō'ā)、パタウタウ(pāta'uta'u)と名付けられた5つのダンススタイルがあります、
中でも、オテア('ōte'a)はタヒチアンダンスの象徴的なスタイルで「伝統的なタヒチアンダンス」と聞いて多くの人が思い浮かべるのがこの形式です。もともとは古代に男性が躍るハカ(戦いの踊り)でしたが、現在では女性によるオテア('ōte'a vahine)や、男女混合のグループ('ōte'a āmui)も見られます。このダンスは非常にリズミカルで力強く、動きに正確さが求められるため、ステップや動作の高度な技術が必要です。
また、最も感動的なダンスと言われているのがアパリマ('Aparima)です。これは、音楽や歌詞に合わせて演じられるマイム(無言劇)のようなダンスで、女性ダンサーの腰の繊細な動きに支えられた腕や手が言葉となり、ダンスを通して物語を語ります。優美で美しい一つひとつの動きが「言葉」となり、それが「文章」となって観客に物語を伝えるのです。タヒチアンダンスはまるで「綴られた物語」のように、観る人に魔法のような感動を与えます。

言葉の舞
物語を受け継いでいくうえで、古代フレンチポリネシア社会には文字が存在しませんでした。それでも、知識は世代を超えて失われることなく受け継がれてきました。神々の物語、祖先の壮大な冒険の逸話、家系の系譜、そして星の地図までもが、口承によって代々伝えられてきたのです。
タヒチアンダンスの一つである「パタウタウ(Pāta'uta'u)」は、まさにその目的のために存在していました。ソリストが詠唱のようなリズムで歌い上げる歌に合わせて踊るこのダンスは、記憶の道具(記憶術)として生まれたのです。そのリズムに合わせた振り付けは、歴史を記憶し、伝える手段となっていました。
『オリ・タヒチ』とタムレの生きた歴史
フレンチポリネシアの滞在中、「タムレ(Tāmūrē)」という言葉を耳にする機会があるかもしれません。これは、現代的な要素も取り入れた「オリ・タヒチ('ori Tahiti)」といえるでしょう。
ホテルなどでダンスグループのパフォーマンスを見るとき、マルケサス諸島など他のポリネシア文化の影響を感じられることがあります。しかし、文化的背景は「オリ・タヒチ」と変わりません。それは、タトゥーや言語と同様に宣教師時代や植民地時代に消滅しかけたものの、美しく力強く蘇った「アイデンティティと歴史の生きた表現」なのです。ポリネシアンダンスは今、より強くなって戻ってきました。このダンスは、ダンサーたちを一つにし、人々とこれまで培ってきた文化遺産とを再び結びつけています。
ステップ1つ1つが、我々の物語を語っているのです。「オリ・タヒチ」を通して感じられる深い情熱と感動は、タヒチの島々での素晴らしい思い出となるでしょう。