パリの楽しみ方
パリが世界で最も美しい都市であることは、数々のガイドブックが認めています。芸術や歴史を見ることができる有名なパリの名所の案内情報はすでに巷にあふれています。代わりに、このガイドではパリジェンヌが知っている、あまり観光客には知られていないようなローカルなパリ情報をご案内いたします。まるでパリの秘密を知るような、他のガイドブックでは得られない情報をお楽しみください。
パリの基本ガイド
パリはフランスの首都であり、行政や制度の中心地ですが、それだけではありません。12世紀からは大学都市として名を馳せ、19世紀からは芸術とレジャーの都としても有名です。そのことは、市内の公園や宮殿、美術館を訪れるとよくわかります。
パリ市にはルーブル美術館、ヴェルサイユ宮殿、凱旋門などの名所が多くあります。エッフェル塔に登ったり、サクレクール寺院や国民議会を訪れたり、古本屋が並ぶセーヌ川沿いを散策したりするのも楽しいでしょう。パリの象徴とも言えるセーヌ川には30以上の橋がかかっており、中でも最も美しいのはアレクサンドル3世橋です。最もロマンチックな橋はポン・デ・ザール(Pont des Arts)でしょう。ポン・ヌフ(Pont Neuf)はその名前とは裏腹に、1609年に作られたこの街で最古の橋です。コンコルド橋はバスティーユの石で造られた、まさにパリのシンボルともいえる橋です。
パリを知る
パリは20の行政区に200万人以上が住み、周辺圏には1350万人もが暮らしています。パリは最盛期を過ぎたという人もいますが、パリをよく知る人々の意見はそれとは正反対です。パリは、それぞれの個性が際立ちながら密接に結びついており、まるで村々が密集しているような街です。パリの歴史を遡ると、クロヴィスがパリを王都として築いたのは5世紀後半のことですが、パリが本当に王権の中枢となったのは15世紀になってからのことです。以降、パリは急速に発展を遂げました。石造り、半木造などあらゆる建物が城壁を越えて、セーヌ河岸からモンマルトル、シャイヨー、モントゥリスなどの7つの丘に隣接する混沌とした通りに広がっていきました。
光の都パリ
19世紀、ナポレオン3世はガス灯、配水システム、下水道など近代的な設備を導入し、パリを世界的な大都市に変えようと試みました。彼はまた、人々の不安の元となっていた狭く、不健康な狭い道を改善し、広い大通りを構えることで移動しやすい街へと変えていきました。
ナポレオン3世はセーヌ県知事のオスマン男爵に工事の監督を命じ、パリの建物は次第に、彫刻で飾られた大きな石造りの建物へと変わっていきました。パリの象徴であるオスマンスタイルの建物は、1860年に56,000個の街灯が設置されたパリの街を、より美しいものへと導いていきました。
小さな村々の集合体、パリの20区
凱旋門、オペラ座、コンコルドといった象徴的なランドマークへと続く広い大通りを持つパリの近代的なレイアウトは、歴史的な地区の建物や景観を阻害することなく設計されています。藤や葵の花が点在する狭い石畳の通り、ひっそりとたたずむ噴水、隠れた庭園、趣のある小さな商店、こだわりの食料品店、一点ものを売るショップなど、大きな通りを超えた向こうには、魅力的な世界が広がっています。
パリでは、小さな角を曲がるとそこには「パリジェンヌのパリ」が存在します。
噴水や庭園を巡る
パリと言えば、芸術と歴史の街。美術館、ブラッスリー、庭園、劇場などが思い浮かびます。パリで最も重要な地区のひとつ、6区から案内を始めましょう。パリで最も美しい広場のひとつ、フュルステンベルク広場(Place Fürstenberg)は、サンジェルマン・デ・プレ教会のすぐ先にあります。画家ウジェーヌ・ドラクロワはここにアトリエを構え、現在その場所は美術館となっています。1830年、この場所でドラクロワは「民衆を導く自由の女神」を描きました。
1612年にマリー・ド・メディチによって造られたリュクサンブール庭園は、パリの中心部にフィレンツェの雰囲気をもたらしています。園内を散策して、106体もの彫像やバラ園、果樹園を鑑賞しましょう。公園の中の池では、老若男女に200年近くもの間親しまれてきた舟のおもちゃを浮かべて遊ぶゲームに是非トライしてみてください。
美食の殿堂
ランチタイムには、メディシス(Médicis)通りの「テラス・ド・マダム(Terrasse de Madame)」か、同じ名前の通りにある古くて小さなイタリアンレストラン「シェルシュ・ミディ(Rue Cherche-Midi)」を訪れてみるのはいかがでしょうか。ノートルダム・デ・シャン通り(Rue Notre Dame des Champs)にあるデリカテッセン「ヴェロ(Vérot)」を訪れ、テイクアウトで食べ物を購入し、公園のベンチでランチを楽しむこともおすすめです。チーズマスターと呼ぶにふさわしい店の主人が、秘伝の豚肉料理を提供してくれるでしょう。ポワラーヌベーカリー(Poilâne bakery)で購入できるサクサクのパンと一緒にお楽しみください。
さらに、グランド・エピスリー・デュ・ボン・マルシェ(Grande Épicerie du Bon Marché)を訪れ、フランス料理の最高峰を体験してみるのもおすすめです。「フレンチ・ガストロノミー」という言葉の本当の意味を実感することができるでしょう。
好奇心を刺激するパリ
オルセー美術館、エッフェル塔、シャン・ド・マルスなど名所を多く抱える7区では、剥製や珍しい本、その他不思議な品々など宝の山を楽しめる「デロール(Deyrolle)」のようなユニークなショップに出会うこともできます(Bac通り)。珍しいアイテムの数々は、まるで博物館を訪れているような楽しさをもたらしてくれるでしょう。
本を片手に、アンヴァリッド美術館とナポレオン1世の墓に隣接するロダン美術館の庭園を訪れるのもおすすめです。ここでは、緑と彫刻に囲まれたパリの偉大な彫刻家の作品を見ることができます。
バティニョール公園は、1860年にパリ市の所有になりましたが、今でも17区に田舎ののどかな雰囲気をもたらしています。ここは、ナポレオン3世がパリの近代化のために取り入れた24の公園と庭園のひとつです。この地区のルメルシエ通り(rue Lemercier)、ルジャンドル通り(rue Legendre)、デ・モワンヌ通り( rue des Moines)にある小さなレストラン「ボボ(Bobo)」は、その雰囲気と質の高さで訪れる人たちを驚かせ、感動させています。
ハリー・ポッターファンやお子様連れの方は、5区のカルム通り(rue des Carmes) 8番地に立ち寄ってみましょう。ここには世界最古のマジックショップ、マイエット(Mayette)があります。1808年に開店したこのショップでは、フーディーニやデビッド・カッパーフィールドをはじめとする偉大なマジシャンやイリュージョニストたちが買い物をしてきました。トリック・カード・セットからヒンドゥー糸、二重底の帽子まで、ありとあらゆるマジックグッズを販売しています。世界最高のトリックのいくつかが考案されたのは、この店の地下室なのです。
モニュメントの裏側、素顔のパリ
モンマルトルの頂上ではなく、13区にあるビュット・オ・カイユ( Butte aux Cailles)の魅力的な石畳の道をご案内します。なだらかな坂道が続くこの地区は、のどかな村の雰囲気を残しています。アルファン通り( Rue Alphand)、バロー通り(Passage Barrault)、シゴー通り(Passage Sigaud)など、芸術家を惹きつけ続けるパリの伝統的な石畳の通りを散策してみましょう。メルル・モクール(Merle Moqueur)でドリンクを楽しむのもおすすめです。
18区では、モンマルトル以外のエリアは避けておいたほうが無難です。1928年から営業しているこの街最古の劇場、スタジオ28でクラシック映画を鑑賞し、光の街で生まれた過去と現在の映画に敬意を表しましょう。
3区のモンモランシー通り(rue de Montmorency)51番地にある首都最古の邸宅を訪れ、時を遡ってみましょう。14世紀には、ここに、有名な錬金術師ニコラ・フラメルが住んでいました。
パリは街全体が屋外美術館のようで、特に1区のルーブル美術館付近はモニュメントやアートで溢れています。パレ・ロワイヤル庭園は、街の中にもうひとつの村を創りあげています。
コメディー・フランセーズ(The Comédie-Française)、テアトル・デュ・パレ・ロワイヤル(Théâtre du Palais-Royal)、そして歴史的建造物に指定されているグラン・ヴェフール・レストラン(the Grand Véfour restaurant)などの名所はもちろん、ビュランの円柱(Buren’s Columns)や2つのポル・ブリーの噴水(Pol Bury fountains)など、周辺では現代アートを見ることもできます。しかしこのエリアの一番の魅力は、メダルや装飾品を扱うバクヴィル(Bacqueville)、鉛の兵隊やヴィンテージのおもちを扱うドラポー・ド・フランス(Drapeau de France)、ラ・コメディ・フランセーズ( La Comédie Français)など、他では出会えないような個性的なショップにあります。こうした小さなショップはパリの真髄であり、パリの街を親しみやすく独創的な場所にしている理由です。