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タマ・ノ・テ・タイロト(Tama no te Tairoto) ラグーンの謎を解き明かし、未来へつなぐ

ポリネシアの島々に広がるラグーンや河川には、いまだ多くの謎が残されています。

2014年、海洋生物学者のヴェテア・リアオ氏は、サンゴの一種「ポリテス・ルス」が一斉に産卵する瞬間を偶然目撃しました。当時、この現象はほとんど記録されていませんでした。

 

その後、長年にわたる研究を経て、リアオ氏は2021年にアンヌ=マリー・トラン氏、マルグリット・タイアルイ氏とともに「タマ・ノ・テ・タイロト」を設立。現在ではエア タヒチ ヌイの支援も受けながら、市民参加型の科学プロジェクトとして活動を広げています。

 

彼らの目標は、海洋生態系への理解を深め、その保全につなげることです。

「タマ・ノ・テ・タイロト」とは、タヒチ語で「ラグーンの子どもたち」を意味します。その名の通り、自然環境の調査・研究に加え、教育や啓発活動を通じて、フレンチポリネシアの豊かな自然遺産を守る仲間を増やしています。私たち一人ひとりが、この美しい自然を未来へつなぐ担い手なのです。

今回は、タマ・ノ・テ・タイロト代表のヴェテア・リアオ氏にお話を伺いました。

Tama no te Tairoto ponte des coraux Porites Rus

タマ・ノ・テ・タイロト設立のきっかけを教えてください。

「私は海洋生物学者です。海への情熱は、子どもの頃に楽しんでいた素潜り漁から始まりました。フランス本土で学んだ後、2009年にポリネシアへ戻り、研究機関や海洋資源局で働いていました。

その中で、ポリテス・ルスというサンゴが同調して産卵する現象を発見しました。研究を進めるうちに、この産卵はフレンチポリネシアの複数の島で同時に起こり、しかも予測可能であることが分かってきたのです。

Tama no te Tairoto équipe

この現象を継続的に観察するため、市民科学ネットワークを立ち上げました。しかし、さらに研究を進めるには観察者を増やす必要がありました。そこで設立したのが、タマ・ノ・テ・タイロトです。

私は公務員としての仕事を辞め、この活動に専念することを決意しました。現在では、サンゴの産卵観察ネットワークは国際的な広がりを見せています。また、サンゴ礁やラグーン、河川に関するさまざまなプロジェクトも進行中です。」

協会の主な活動目的について教えてください。

「私たちの最も大切な使命は、水辺の生態系を守ることです。そのため、私たちの暮らしを支える海洋生態系の基盤であるサンゴ礁だけでなく、陸と海をつなぎ、多くの環境問題の影響を受ける河川にも目を向けています。

市民参加型プログラムで集められた観察データは、生態系への理解を深める貴重な資料となっています。自然を守るためには、まず自然を正しく知ることが何よりも大切です。

その理解が深まることで、海洋生物の保全や、人と自然が共生するための環境管理にもつながっていきます。また、活動を進めるうえで欠かせないのが環境教育です。

Tama no te Tairoto coraux en Polynésie

私たちは、人々とこの豊かな自然とのつながりを取り戻したいと考えています。

ポリネシアでは、多くの人がサンゴ礁のすぐそばで暮らしています。しかし、サンゴやそこに生息する生き物たちが私たちの生活にどれほど大きな役割を果たしているかを、十分に知らない人も少なくありません。

例えば、サンゴの産卵を実際に目にすると、「サンゴは植物ではなく動物である」ということを実感できます。そうした体験を通して、人々のサンゴ礁に対する見方も少しずつ変わっていくのです。

さらに私たちは、将来的に海岸沿いに広がる**裾礁(フリンジングリーフ)**の再生にも取り組みたいと考えています。そのためには、海のそばで暮らす人々の協力が欠かせません。

地域の皆さん一人ひとりが、自宅の前に広がる小さなサンゴ礁を守ることができれば、それがやがてサンゴ礁全体の再生へとつながっていくのです。」

Tama no te Tairoto aires marines éducatives

現在取り組んでいるプロジェクトについて教えてください。

「現在、私たちは主に2つのプロジェクトに取り組んでいます。ひとつは、フレンチポリネシア内外で行っているサンゴの産卵観察。もうひとつは、今年始まった裾礁の再生プロジェクトです。そのほかにも、さまざまな取り組みを進めています。

1つ目は「海の教育エリア」です。子どもたちが実際に海に入り、自分たちを取り巻く自然環境について学ぶプログラムです。

2つ目は、サンゴに関するタヒチ語の語彙をまとめる文化プロジェクトです。サンゴにまつわる言葉を記録し、人々がこのテーマに関する言語や文化を改めて自分たちのものとして受け継いでいくことを目的としています。

Tama no te Tairoto nudibranches en Polynésie

3つ目は、エア タヒチ ヌイの支援を受けて行っている市民参加型プロジェクトで、ウミウシの仲間である「裸鰓類(らさいるい)」の調査です。裸鰓類は、色鮮やかな小さな海の生き物です。

4つ目として、私たちは定期的にイベントも開催しています。毎年、写真とアートの展覧会を開催しており、その年ごとに独自性のあるテーマを設けています。2026年のテーマは「2つの世界のあいだにある生命」。陸、海、空のつながり、そしてそれらの境界に生きる生き物たちに光を当てました。」

タマ・ノ・テ・タイロトの活動実績

協会設立以来、これまでに

750件の観察記録、世界220か所での調査、

1,300人以上の観察者が参加しています。

Tama no te Tairoto nudibranche à Tahiti

エア タヒチ ヌイとのパートナーシップについて教えてください。

「私たちがエア タヒチ ヌイと協力しているプロジェクトは、「ウミウシ・フォートナイト」と呼ばれるものです。このプロジェクトでは、15日間にわたり多くのボランティアがタヒチ島やモーレア島のさまざまな場所を昼夜問わず訪れ、できるだけ多くの裸鰓類、つまりウミウシの仲間を探します。

この調査を率いるのは、ニューカレドニアをはじめ世界各地で同様の調査を行ってきた2名の研究者です。ひとりは、パリ国立自然史博物館の名誉教授で、軟体動物の専門家であるフィリップ・ブシェ氏。もうひとりは、アメリカのカリフォルニア州立ポリテクニック大学の教授で、裸鰓類の専門家であるエンジェル・バルデス氏です。

目的は、この2名の研究者が現地に滞在する2週間を最大限に活用し、できるだけ多くの人々に調査へ参加してもらうことです。同時に、専門家との交流や講演会、食事をともにする機会を設けるなど、人と人とがつながる温かなイベントにもなっています。

エア タヒチ ヌイは、この2名の研究者をフレンチポリネシアへ招くための支援を通じて、プロジェクトの実現を後押ししてくださいました。現地では、ほかのパートナーの皆さまにも物流面などでご協力いただいています。こうした貴重な支援のおかげで、協会の予算に大きな負担をかけることなく、最初から最後まで協働によるプロジェクトを実現することができました。

「ウミウシ・フォートナイト」は6月16日から7月2日まで実施され、2027年6月に予定されている次回の写真展の素材にも活用されます。この取り組みを通して、まだあまり知られていないウミウシという生き物への理解を深めてもらいたいと考えています。」

Tama no te Tairoto coraux

読者の皆さまへ伝えたいメッセージはありますか。

「まずお伝えしたいのは、一人ひとりの行動の大切さです。多くの人は、サンゴを死滅させているのは地球温暖化であり、自分たちのせいではなく、できることもないと考えがちです。だからこそ私は、私たちのすぐそばにある裾礁の再生プロジェクトを大切にしています。身近なサンゴ礁は、地球温暖化だけでなく、私たち人間の日々の活動によっても大きな影響を受けているからです。

私たちが日常生活で使うものは、やがて土壌へ、そしてラグーンへと流れ込んでいきます。洗剤、肥料、化粧品、処理された生活排水など、さまざまなものがその一例です。

私たち一人ひとりに責任があります。特に、私のように海のそばで暮らす人々にとって、その責任はより身近なものです。

まず大切なのは、サンゴが生きている動物であると知ることです。サンゴを踏んではいけませんし、ラグーンに入るときには傷つけないよう注意する必要があります。それは誰にでもできる、とても大切な第一歩です。

私たちは、ただ見ているだけの存在であってはいけません。環境を守るための変化は、こうした日々の小さな行動から生まれていくのです。」

L'équipe de l'association Tama no te Tairoto Tahiti

タマ・ノ・テ・タイロトへのお問い合わせ・ご支援について

タマ・ノ・テ・タイロトの活動や最新情報については、公式ウェブサイトまたはSNSをご覧ください。講演会、展覧会、その他のイベント情報に加え、環境保全活動への参加募集なども随時発信されています。

活動へのご協力や寄付をご希望の方は、協会へ直接お問い合わせください。

写真クレジット:

チーム写真:Tama no te Tairoto

ラグーン:Vetea Liao / Tama no te Tairoto

サンゴの産卵:Felix Jobbe / Captain Darwin

ウミウシ:Pauline Bosserelle / Tama no te Tairoto